魚の刺身を食べるのなら気を付けたいし、知っておきたいのがアニサキスについて。
刺身が好きな人で苦しんだことがある方も少なくはないはず。
大好きな刺身をたべて苦しい思いをするとか本末転倒な話なので、刺身が好きだからこそしっかりと知識を付けておきたいところです。
アニサキスは魚種によって寄生している可能性が高くなるので、寄生しやすい魚、そして対処法を学んでおきましょう。
アニサキスってどんな寄生虫?
まずはアニサキスってどんな寄生虫か知ってますか?
名前は知っていても見たことが無い方のほうが多いかも知れません。アニサキスが寄生しやすい魚、例えばサバなどの内臓(ハラワタ)をよーく見てみると発見することがあるでしょう。
↓の写真はサバの内臓に入っているアニサキスの画像です。
気にして見ることがないので気づかないことの方が多いですが、実はアニサキスは思っているよりずっと身近にいるものなのです。
しかも、私が魚に携わった当時(10数年前)は特定の魚種だけ気を付けていれば良かったのですが、ここ数年は様々な魚に寄生しているので、特定の魚種だけでなく、どんな魚でも「いる前提」で調理した方が良いでしょう。
針金のように細く、見落としてしまうほど小さな寄生虫ですが、舐めてかかると痛い目に合うことは間違いありません。
それではアニサキスが寄生しやすい魚、調理する場合、保存する場合の注意点を学んでいきましょう。
そんな怖いアニサキスを食べてしまう理由
上述してきましたがアニサキスは非常に怖い寄生虫です。
これだけ危険視されていて、注意されているのに食べてしまう理由ってなんだと思います?
理由として多いのが
- 目視不足でアニサキスを見落として刺身にしてしまう。
- “いない前提”で調理し提供してしまう。
- 知識不足による調理法で提供してしまう。
- アニサキスの存在自体を知らない(一般人)。
などが挙げられます。これは私が水産関係の仕事をしている中で、実際に起こった事例です。
大切なことなので詳しく解説しておきます。
目視不足でアニサキスを見落としてしまう
アニサキスの寄生率のたかい魚を刺身で提供する場合、目視によるチェックは神経を使って行わなければなりません。
三枚におろし、まずは目視。さらに刺身に切る際も1切れづつ目視することは、調理する側の責任と言えます。
しかし、調理する側がその作業を怠ってしまい、見落としてしまうという事例は少なくありません。
これに関しては食べる側に予防する術がないのが困ったものです。提供された料理は信用して食べてしまいますもんね。
これを予防するためにも調理する側の人間は、しっかりと目視する作業を怠らないよにして欲しいものです。
「いない前提」で調理してしまう
アニサキスの寄生率が高い魚は限られています。
魚種については後述しますが、寄生率の高くない魚を調理する場合に「入っているとは思わなかった」という事例が割と多くあります。
これについては、養殖物、冷凍もの以外の魚を調理する場合は「いる前提」で調理することで予防できます。
天然の魚には「アニサキスがいる」くらいに思っていて丁度いいのかも知れないですね。少なくとも私はそうしています。
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知識不足で調理して提供してしまう
例えば〆サバ。
「アニサキスは酢で〆ると死滅するんでしょ?」
なんて言っている居酒屋の店主など珍しくもありません。アニサキスは短時間、酢につけたくらいじゃ死にません。
身の中にアニサキスが入り込んでいた場合、たかだか数時間、酢につけたくらいじゃアニサキスまで酢は届かない。
お客に提供するのなら、それくらいの知識は持っていましょうね。それともう1つ、酢醤油で食べたところでアニサキスは死なないから。
「うちは刺身を食べたもらう時は酢醤油だから大丈夫」
とか頭のなかお花畑としか思えない。寄生虫について学んでおきましょうね。
最後の1つは「アニサキスの存在自体を知らない」ですが、これは一般の方が自宅で調理する場合なので、後述する「予防法」を参考にしてください。
アニサキスを予防するには
甘く見ていると痛い目にあうアニサキスですが、ここまで何故アニサキスを食べてしまうのか?の原因について書いてきました。
ここからは出来るだけ予防する方法について書いてみます。
アニサキスは時間が経つと身の中に入っていく
アニサキスは魚の身の中に入っていくことがありますが、何も最初から身の中に入っているわけではありません。
ここは非常に大事なポイントになります。
アニサキスと言えばサバを思い浮かべる方もいるでしょうが、サバ自体がアニサキスを体内に発生させるのではなく、食べるエサによってサバにアニサキスが寄生するんです。
- クジラなどがアニサキスの卵を排出する
- それをプランクトンなどが食べる
- プランクトンをエサにする小魚が食べる
- それらの魚をエサにした魚に寄生する
という流れです。そして、ほとんどの場合、アニサキスは身の中まで食い込んでいかず内臓部分にとどまっています。
ではなぜ身の中に入っていくのでしょう。
アニサキスは熱に弱い
アニサキスは熱に弱いので温度の高いところを好みません。
水揚げ直後の鮮度の高い状態であれば内臓にとどまっているのですが、時間がたつにつれ内臓の温度も上がっていきます。
そうするとアニサキスは、より冷たい場所を求めて身の中に食い込んでいきます。
こうなってしまうとアニサキスに気づきにくくなってしまうのです。
しっかりと目視できる人間が料理してくれればいいですが、中途半端に調理してしまったり、いない前提で刺身にしてしまうことで、食べた人は胃の中にアニサキスを招待してしまいます。
ここまでで、アニサキスが身の中まで入る理由が分かっていただけたでしょうか。それでは対策を解説していきます。
刺身は鮮度が高い状態で調理されたものを食べる
ここまで解説してきたように、鮮度が落ちるほどアニサキスは身の中に入る確率が上がります。
逆に考えると「鮮度の高いうちに調理するほどアニサキスが身の中に入る確率が下がる」ということですね。
鮮度の高い魚を仕入れているお店で、且つ内臓を取り出しているお店は信用できるお店です。
知識のある料理人は、魚を仕入れるとまずは内臓を抜きます。それは鮮度の劣化を防ぐのと、アニサキスなどの寄生虫が食い込んでいくのを予防するためなんです。
知識のある料理人のお店を探すことが一番ですね。
その場で内臓(ハラワタ)を取りのぞく※釣り人限定
これは魚釣りをする方限定になりますが、釣った直後に内臓を取りのぞくのが非常に有効になります。
魚釣りをする際にはナイフなどを持参しておくのがいいでしょうね。
内臓を取りのぞくことでアニサキスが身の中に入ることを防げます。さらにクーラーボックス、氷を用意して鮮度を保つことも効果があります。
どんな魚でも内臓は取り出しておきましょう。
鮮度が落ちた場合は加熱調理、冷凍保存する
アニサキスは70度以上で加熱する事で死滅します。さらに、48時間以上冷凍する事で死滅するんです。
最近は「手作りしめさば」も解凍表示があるのが普通になってきましたが、あれはアニサキスを予防するため。
大手ほど〆サバを作る場合は48時間以上の凍結ののち、〆サバを作っています。
毎日のように魚をおろしている魚屋でさえ見落とすほど、身の中に入ったアニサキスは見落としてしまう可能性が高いのです。
しっかりと目視する
自宅で刺身を切る場合はしっかりと目視しましょう。
特にお腹の部分はアニサキスがいることが多いので注意。切る際はなるべく「そぎ切り」にすることをお勧めします。
これは薄く切ることでアニサキスを見落とさないためです。
刺身の切り方については↓で詳しく解説しているので参考にしてください。
刺身の切り方を伝授!自宅で刺身を切ることのメリットを知っておこう
身の中に「小さな渦巻のようなもの」が確認できたら、それはアニサキスです。
細かく切る、良く噛む
アニサキスは噛まれたり切られたりすると死にます。なので、よく噛む、細かく切ることで予防できます。
特にアニサキスが寄生しやすい魚を食べる場合は心がけておきましょう。
アニサキスが寄生する魚
アニサキスが寄生する魚は年を追うごとに増えているように感じます。
それだけエサが少なくなっているのかも知れないですね。
その中でも特に寄生しやすい魚を挙げますので参考にしてください。
サバ
アニサキスといえば「サバ」と言われるほど代表的です。
加熱調理するのなら問題はありませんが、刺身で食べるのなら要注意になります。
ただ、九州以外では刺身で食べることの方が珍しい魚でもあるので、刺身で食べることのない地域では〆サバに注意すれば問題ありません。
近年では養殖サバも出回っており、安心して食べることも可能になってきました。
〆サバを食す場合でもアニサキスには注意が必要です。〆サバを食べる場合は「冷凍して作っているか否か」を聞いてもいいくらいかも。
サバの刺身については→鮮度、食感に驚愕せよ!サバ(鯖)の刺身はまじでうまい!!
スルメイカ、アオリイカ(ミズイカ)
身近な魚であるスルメイカ、アオリイカ(ミズイカ)にも寄生します。
スルメイカに関しては冷凍された刺身はあるものの、店でさばいて刺身にするお店はほとんどありません。
スーパーで見かける場合も「加熱用」で販売されていることの方が多いでしょう。
それもそのはず、スルメイカは本当にアニサキスが多い。
特に注意したいのが料理屋さん手作りの「塩辛」です。手作りの塩辛は冷凍後に作っていないことが多く、アニサキスの被害が非常に多いんです。
塩を絡めたからといってアニサキスは死なないので注意してください。
アオリイカについては稀ですが寄生例があります。アオリイカは磨いた際に電機などで透かすことで発見できるので、刺身に切る前に一応確認してみてください。
ヨコワ、サワラ、カタクチイワシ
これらの魚も寄生していることが多いです。
カタクチイワシなんて寄生していると思った方がいいでしょう。カタクチイワシに関しては生で食べることはお勧めしません。
ヨコワというのは本マグロの子供のことです。食卓にならぶ本マグロは、ほとんどが養殖になっていますが、天然の魚体の小さな本マグロには寄生していることがあります。
サワラはどちらかと言えば加熱調理が多いですが、刺身で食べても美味しい魚なので、刺身で販売されることもあります。見かけた際には注意が必要です。
他にも、タラ、アンコウ、秋鮭、などにアニサキスが見られますが、これらは「加熱調理」で販売されることがほとんどなので心配はいらないでしょう。
アニサキスの症状
アニサキスの症状は様々な事例が報告されていますが、どんな症状がでるにせよ苦しいことは間違いありません。
腹痛
刺身を食してから4時間~6時間後に激しい腹痛が出ます。知人がアニサキスを食べた際はは、病院で「胃潰瘍」と診断されたらしく転げまわるほど痛がっていました。
アニサキスは人間の胃の中に入ると、外に出ようと胃袋の内側に噛みつきます。胃袋を食い破って外に出ようとするのです。
奴が頑張れば頑張るほど、体内にアニサキスを招いた人間は苦しみます。そりゃそうでしょうね。
ただ、腹痛に4日間以上耐えれば死滅すると言われていますが、4日間も耐えるなんて拷問…。刺すような痛みを感じたら迷わず病院に行きましょう。
吐き気、嘔吐
アニサキスの症状は、吐き気や嘔吐も報告されています。
腹痛を伴い、嘔吐、下痢、吐き気が出たという報告が多かったです。知人の1人は激しい腹痛、嘔吐を繰り返し、病院で胃カメラを飲んで摘出して貰いました。
他にも色々な報告があります。湿疹がでた、失神したなどが報告されています。
もし購入した刺身にアニサキスがいて腹痛を起こした場合
何にしてもアニサキスを食べてしまい、症状が出たのであれば病院に行くことが先です。
問題はその後。
自分で調理した場合、料理屋さんで提供してもらった場合、スーパーで購入した場合について書いてみたいと思います。
いうまでもないでしょうが、魚釣りをされる方でアニサキスにあたった場合は自己責任です。
丸の魚を購入してアニサキスに当たった場合
これに関しては揉めることが多いのですが、丸の状態で魚を購入し、自分で調理した結果アニサキスにあたった場合。
これは完全に自己責任になります。
「販売側がアニサキスがいる魚を販売しているのが悪いじゃないか!」
こう主張される方もいますが、丸の状態なので中身は誰にもわかりません。アニサキスの寄生率のたかい魚は、今ではほとんど刺身用で売られることもありませんから。
丸の状態で購入し、自分で調理した結果、アニサキスにあたった場合は完全に自己責任だということを覚えておきましょう。
刺身に加工されたものを購入してアニサキスにあたった場合
これはお店側の不注意なので、お店側に連絡をいれましょう。
刺身というのは「そのまま食べることができる状態」です。そこまで加工しているのですから、当然ながら目視はもちろん、アニサキスがいないことを確認しなければなりません。
治療費はもちろん、慰謝料的な話にもなるので、お店に連絡をして話をすることをお勧めします。
刺身まで加工していたのなら、あなたに過失はありません。
3枚卸まで加工して貰った場合
これなんですよ。決まって揉めるのは。
丸売りの魚を調理してもらい、三枚おろし、二枚おろしの状態で購入した場合。
三枚におろしてもらった魚を自宅で刺身にしたところ、アニサキスが身の中まで入っていてあたってしまう。こんな事例も珍しくはありません。
これは非常に難しくなります。
加熱用で販売されているものを刺身にしたのなら、購入側に責任がありますよね。刺身で食べることを推奨していないのですから、そもそも刺身で食べることが間違いです。
問題は「刺身用」で販売されていた場合です。
身の中まで入っていたのなら販売側に確認する術はありません。が!目視できる場所にいたのか、それとも身の中まで入っていたのか確認のしようがないんです。
ただ、これは一応、販売側に連絡するのがいいでしょう。良心的なお店の場合、病院代などは支払ってくれるケースもあります。
しかし、3枚卸しにしただけでは「目視できない」場合が多いので、お客の責任という判断をする販売者も多いです。
アニサキスで腹痛を起こして一番やってはいけない事
アニサキスが原因の腹痛は、かなりの苦痛です。しかし、やってはいけない事があります。
それは金銭的な要求をする事です。金銭的な要求をする場合、店側との話になるのですが「出るとこ出てもいいんだぞ!」なんて言ってはダメ。
そんな態度で店側に話に行くと、「出るとこ出てください」という話になります。
そして出るとこ出た場合の返答は、「魚には寄生虫がいます」という回答になります。後は店側と話して下さい。
こうなる訳です。話し次第では「治療費」ぐらいは貰える可能性がありますが、こじれると「治療費」すら貰えませんので気をつけましょう。
※店側に連絡する場合は、「店側の不備」の場合です。自分で調理した場合は完全に自己責任になります。
さて、アニサキスについてでしたがいかがだったでしょう?アニサキスは意外に身近な魚にも寄生しています。
しかも年々、寄生する魚種も増えて来ています。不安な場合はお店側にも聞いてみましょう。
コメント
アニサキスですか、
自宅で魚を捌く事が多いので
気を付けたいと思います。
面白い情報ありがとうございます。
>kokoさん
自宅で魚捌くなら気をつけないといけないですね♪